大判例

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東京高等裁判所 平成4年(ネ)3640号 判決

二 右事実によれば、本件建物の共有持分を取得した被控訴人は、自己の共有持分四分の一に基づき、右共有持分権上に設定されている控訴人の有する根抵当権の滌除に及んだものと認められる。

思うに、共有とは、複数の持分権者が各一個の所有権を持ち、その各所有権が複数の持分割合で制限された状態を意味するのであり、共有持分権者の地位は本質的に単独所有権者の地位と異なるものではないし、抵当不動産が分筆されてその一部を取得した所有者や共同抵当の対象とされた数筆の不動産の一部取得者の滌除権行使が許されると解されていることからみても、共有持分権者による持分についての滌除権の行使が一律に許されないとする合理的な根拠は見いだし難い。この理は、滌除制度が時により抵当権を廉価に消除する目的で抵当不動産の第三取得者により利用され、その結果抵当権者に対する不当な圧迫となるおそれが多いとして、立法論的に右制度の存廃・改正について議論のあり、その故に現行法の滌除規定の解釈においても、滌除制度本来の趣旨を逸脱しないようにできるだけ厳格に解すべきであることを勘案しても左右されるものではない。もっとも、共有持分権者による滌除権の行使が原則として有効であるとしても、右共有持分権者が抵当権の権利実行を困難にする目的で、殊更に抵当不動産を細分化し、その持分を譲り受けて滌除権の行使に及ぶといった場合には、右共有持分権者による滌除権の行使は権利の濫用として許されないと解される場合もありえようが、本件において控訴人によりそうした主張、立証はなされていない。

なお、本件において被控訴人による滌除権行使の対象とされた控訴人の根抵当権は、当初から共有者一人の持分四分の一のみについて設定されていたものであり、元来控訴人としては右持分に応じた担保価値を把握していたにとどまるものであるから、被控訴人の滌除権行使により控訴人が把握していた担保価値が毀損されるとか、控訴人が被控訴人以外の共有持分権者による滌除通知の度毎に対応を迫られるという不利益を受けるものではない。また、控訴人の根抵当権は被控訴人以外の共有者の共有持分をも右根抵当権の対象として設定されていたものではないから、被控訴人による滌除権行使が処分行為ないし保存行為にあたるとして共有者全員あるいは他の共有者の同意のもとになされるべきであるということもできない。被控訴人の共有持分が、他の共有者の共有持分とともに控訴人以外の根抵当権者の根抵当権の目的とされている場合に、控訴人以外の根抵当権者との関係において、被控訴人の滌除権行使が他の共有者にとり処分行為ないし保存行為にあたるとみる余地があるというにすぎない。したがって、本件においては、被控訴人の滌除権行使により控訴人の有する抵当権(根抵当権)の不可分性が損なわれるおそれはないというべきである。

もっとも、被控訴人の滌除権行使により、控訴人以外の根抵当権者(前記朝日信用金庫)の有する抵当権の把握していた担保価値が毀損される事態が考えられないではないが、そうした場合においても右根抵当権者が自ら法的手続きに従い権利保全の行為に出ることは格別として、右根抵当権者自らが何ら権利保全の手段を講じないのに、被控訴人の滌除権の行使がそれにより権利を侵害されることのない控訴人との関係においても当然に許されないとする理由は見いだし難い。

以上によれば、被控訴人が本件建物の共有持分権に基づいて行った滌除権の行使は有効であるから、控訴人の根抵当権は被控訴人が滌除金額を供託した平成三年一一月二七日に消滅したものであり、被控訴人の本訴請求は理由があるというべきである。

(岡田 小林 清水)

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